コラム~成蹊ラグビー

歌舞伎

2017/09/05(火) 09:00

僕が歌舞伎に興味を抱くようになったのは高校1年生の時なので今から38年も前のことである 先日の夏休みの四国旅行の際には、念願の金刀比羅(琴平)の旧金毘羅大芝居「金丸座」にも行くことができた

きっかけは父親が行けなくなって代役で鑑賞することとなった『勧進帳』だったのだが、古文の先生から注釈本を借りて観たのが良かったと思う 独特な言い回しなので何を言っているのかわからないだろうと思って借りていったのが正解だった 
おそらくその本がなければ何を言ってるのかわからず仕舞いで興味を持たずに終わってしまったに違いない

場所は半蔵門の国立劇場、また配役も素晴らしかった…武蔵坊弁慶には市川染五郎(現9代目松本幸四郎)、義経は中村勘九郎(故人)、富樫左衛門に片岡孝夫(現15代目片岡仁左衛門)という千両役者のそろい踏みであった 今ではもう決して観ることができないことが残念でならない

勧進帳は平家物語の中でもあまりにも有名な場面ではあるが、知らないと思われる学生のために説明をすると・・・
源頼朝の不興を買ってしまった義経一行が山伏に変装し、北陸経由で東北に逃れようとしていた際に、加賀の国の安宅関所(現在の小松空港近く)を通り抜けようとしたところから舞台は始まる 安宅関所の関守である富樫左衛門は義経一行が山伏姿に変装している情報をつかんでいたものの弁慶の胸中を察し、弁慶の嘘を見破りながら騙されたふりをするも同じ関所の役人が義経に疑いをかけたので、弁慶が持っていた金剛杖で義経を何度も何度も叩いたことで役人の疑いを晴らすこともでき無事に関所を通過したところで、弁慶が泣きながらに義経に詫びを入れ、また弁慶の気持ちを知っている義経も咎めることなく感謝の意持ちを示し主従の気持ちが通い合っている姿に感動を覚える、というものである

勧進帳には日本人が美徳としてもっている敗者や弱者に味方をしてしまう判官贔屓や親子の縁よりも主従の縁を大切にする封建制社会における日本人の道徳観が表されており、そこの微妙な感覚の描写が素晴らしいので長い間愛されているのだと思っている

このように歌舞伎、とくに歌舞伎狂言には時代物を取り入れたものが多く、これは日本人ならだれもが知っている伝説や物語を多く取り入れており親しみやすくなっているので学生にも一度は観て欲しいと思っている

この歌舞伎の世界が起源とされている現代でも良く使われている言葉を少し披露すると・・・
①十八番(おはこ)
これは市川家の得意演目を選び出したところ18本になり、その演目台本を立派な桐箱に収めたことが由来となって十八番(おはこ)と言われるようになったものである ちなみに十八番の中でも有名なのはこの勧進帳の他に「助六」、「暫」・・いずれも時代物
②二枚目、三枚目
美男で人気が高い若衆を二枚目、面白おかしい道外役者を三枚目と呼んでいたものが語源として今でも同じ意味で使われている
※当然、一枚目という言葉もあり、それは看板役者のことを指していたが現在ではほとんど使われていない
③差し金
黒子が蝶や鳥などの生き物の道具をつけ生きているようにひらひらと動かすために使っている長い棒のことを意味していますが、それを現在では「裏で糸を引く」、とか「入れ知恵をして操る」という意味合いで使われるようになっています

このように歌舞伎の世界が由来となっている言葉はまだまだ沢山あり、知らずに使っている言葉もあると思うので興味がある人は調べてみると面白いと思う


さて、いよいよ来週から対抗戦が開幕する
大詰めを迎えるのはまだ先ではあるが、大向こうをうならすような試合を経験し、千両役者が生まれ出てくることを願ってやまない

2017.9.5
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